労働基準法

第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

  1. 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
  2. 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
  3. 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第1項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第39条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。

罰則

6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金(第119条)

労働基準法施行規則

第6条の2

  1. 法第18条第2項法第24条第1項ただし書法第32条の2第1項法第32条の3法第32条の4第1項及び第2項法第32条の5第1項法第34条第2項ただし書法第36条第1項、第3項及び第4項法第37条第3項法第38条の2第2項法第38条の3第1項法第38条の4第2項第1号法第39条第4項、第6項及び第7項ただし書並びに法第90条第1項に規定する労働者の過半数を代表する者(以下この条において「過半数代表者」という。)は、次の各号のいずれにも該当する者とする。
    1. 法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
    2. 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。
  2. 前項第1号に該当する者がいない事業場にあつては、法第18条第2項法第24条第1項ただし書法第39条第4項、第6項及び第7項ただし書並びに法第90条第1項に規定する労働者の過半数を代表する者は、前項第2号に該当する者とする。
  3. 使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

第19条

  1. 法第37条第1項の規定による通常の労働時間又は通常の労働日の賃金の計算額は、次の各号の金額に法第33条もしくは法第36条第1項の規定によって延長した労働時間数、もしくは休日の労働時間数又は午後10時から午前5時までの労働時間数を乗じた金額とする。
    1. 時間によって定められた賃金については、その金額
    2. 日によって定められた賃金については、その金額を1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異なる場合には、1週間における1日平均所定労働時間数)で除した金額
    3. 週によって定められた賃金については、その金額を週の所定労働時間数(週によって所定労働時間数が異なる場合には、4週間における1日平均所定労働時間数)で除した金額
    4. 月によって定められた賃金については、その金額を月の所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1ヶ月平均所定労働時間数)で除した金額
    5. 月、週以外の一定の期間によって定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
    6. 出来高払い制その他の請負制によって定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ。)において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間で除した金額
    7. 労働者の受ける賃金が前各号の2以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によってそれぞれ算定した金額の合計額
  2. 休日手当その他前項各号に含まれない賃金は、前項の計算においては、これを月によって定められた賃金とみなす。

第19条の2

  1. 使用者は、法第37条第3項の協定をする場合には、次の各号に掲げる事項について、協定しなければならない。
    1. 法第37条第3項の休暇(以下「代替休暇」という。)として与えることができる時間の時間数の算定方法
    2. 代替休暇の単位(1日又は半日(代替休暇以外の通常の労働時間の賃金が支払われる休暇と合わせて与えることができる旨を定めた場合においては、当該休暇と合わせた1日又は半日を含む。)とする。)
    3. 代替休暇を与えることができる期間(法第33条又は法第36条第1項の規定によつて延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた当該1箇月の末日の翌日から2箇月以内とする。)
  2. 前項第1号の算定方法は、法第33条又は法第36条第1項の規定によつて1箇月について60時間を超えて延長して労働させた時間の時間数に、労働者が代替休暇を取得しなかつた場合に当該時間の労働について法第37条第1項ただし書の規定により支払うこととされている割増賃金の率と、労働者が代替休暇を取得した場合に当該時間の労働について同項本文の規定により支払うこととされている割増賃金の率との差に相当する率(次項において「換算率」という。)を乗じるものとする。
  3. 法第37条第3項の厚生労働省令で定める時間は、取得した代替休暇の時間数を換算率で除して得た時間数の時間とする。

第20条

  1. 法第33条又は法第36条第1項の規定によつて延長した労働時間が午後10時から午前5時(厚生労働大臣が必要であると認める場合は、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時)までの間に及ぶ場合においては、使用者はその時間の労働については、第19条第1項各号の金額にその労働時間数を乗じた金額の5割以上(その時間の労働のうち、1箇月について60時間を超える労働時間の延長に係るものについては、7割5分以上)の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
  2. 法第33条又は法第36条第1項の規定による休日の労働時間が午後10時から午前5時(厚生労働大臣が必要であると認める場合は、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時)までの間に及ぶ場合においては、使用者はその時間の労働については、前条第1項各号の金額にその労働時間数を乗じた金額の6割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

第21条

法第37条第4項の規定によって、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第1項及び第3項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。

  1. 別居手当
  2. 子女教育手当
  3. 住宅手当
  4. 臨時に支払われた賃金
  5. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

関連通達

睡眠時間における割増賃金の支払い

法別表第1第4号の事業に従事する労働者で一昼夜交代勤務に就く者について、夜間継続4時間の睡眠時間を与えた場合は、それが深夜にわたる場合であっても、その時間についてこれを休憩時間とみなし深夜割増賃金を支払う必要はない。

【S23.4.5基発541号、S63.3.14基発150号、H11.3.31基発168号】

法第37条の割増賃金の意義

法第37条が割増賃金の支払いを定めているのは当然に通常の労働時間に対する賃金を支払うべきことを前提とするものであるから、月給又は日給の場合であっても、時間外労働についてその労働時間に対する通常の賃金を支払わなければならない。

【S23.3.17基発461号】

違法な時間外、休日労働を行わせた場合の割増賃金

法第36条第1項の協定によらない時間外労働又は休日労働は、法第32条または第35条違反であるが、法第37条の規定は法第32条もしくは第40条に定める労働時間を超えまたは法第35条に定める休日に労働させた場合に割増賃金を支払わねばならないという法意であるから割増賃金の義務は免れない。

【S63.3.14基発150号、H11.3.31基発168号】

黙示の指示によって行った時間外労働に対する時間外手当の支払い

労働者が使用者の明白な超過勤務の指示により、または使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる。

【S25.9.14基収2983号】

時間外労働が翌日の始業時間を超えて行われた場合の割増賃金

第36条第1項による時間外労働が継続して翌日の所定労働時間に及んだ場合は、翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して第37条の割増賃金を支払えば、第37条の違反にはならない。

【S26.2.26基収3406号、S63.3.14基発150号、H11.3.31基発168号】

所定労働時間が1日7時間の労働者に8時間の労働を行わせた場合に支払わなければならない賃金

法定労働時間内である限り所定労働時間外の1時間については、別段の定めがない場合には原則として通常の労働時間の賃金を支払わなければならない。ただし、労働協約、就業規則等によって、その1時間に対し別に定められた賃金額がある場合にはその別に定められた賃金額で差し支えない。

【S23.11.4基発1592号】

除外賃金の取扱い

家族手当、通勤手当及び規則第21条に掲げる別居手当、子女教育手当は名称にかかわらず実質によって取り扱うこと。

【S22.9.13発基17号】

家族手当を除外賃金とする趣旨

S22.9.13発基17号通牒は扶養家族数またはこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当は、物価手当、生活手当その他名称の如何を問わず家族手当として取り扱い、割増賃金の基礎となる賃金の計算においてはこれを除くという趣旨である。

(家族手当が)独身者に対しても幾何かが支払われているときは、その手当は家族手当とは関連のないものであり、また扶養家族がある者に対し、その家族数に関係なく一律に支給されている手当は家族手当とはみなされない。

【S22.11.5基発231号】

出来高払制労働者の時間外割増賃金

賃金が出来高払制その他の請負制によって定められている者が、法第36条第1項もしくは法第33条の規定によって時間外又は休日労働をした場合の賃金は、その賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に法第36条第1項もしくは法第33条の規定によって延長した労働時間数もしくは休日労働時間数を乗じた金額のそれぞれ2割5分、3割5分で差し支えない。

【S23.11.25基収3052号、S63.3.14基発150号、H6.3.31基発181号、H11.3.31基発168号】